第1回公判を指定する・しないで揉めている案件がある。
自転車による追突事案であるが、結果回避可能性についての検察官の具体的な主張が出ないので、第1回公判前から時間を浪費していることは事実である。そして、たまりかねた裁判所(鵜飼伸洋裁判官)から、「すでに起訴から相当長期間が経過しておりますので」として、第1回公判を指定するぞという予告があったわけである。

いきなり本題から逸れるが、結果回避可能性を具体的に特定するよう、1月に求釈明を申し立てると、2月にいきなり訴因変更(注意義務違反のうち片方が撤回された)となり、益々、結果回避可能性の構成が見えづらくなり、同月、求釈明改訂版を提出していた。それから3ヶ月強、6月に入り漸く、一部の回答が提出された。

その回答が(悪い意味で)なかなかのもので、次のような内容である。
「・・・(制動による回避の方法)、または、被告人が被害者と衝突する前に左右のいずれかの方向に進路を変更して被害者の左右いずれかの空間に自車を走行させて衝突を回避する方法が考えられる。」

弁護人は、結果回避可能性を具体的に特定するよう求めたのである。
そうすると、「ぶつかる前に回避すれば、回避出来る」と。
そりゃそうだろう。ぶつかった後に回避は出来ないのだから。
こんなことでどうやって、集中審理を行おうというのか、皆目検討もつかない。

さて、本題に戻す。
「浅ましい」というのは、期日指定を強行するという予告書が送付された関係である。
6月16日(金)16時56分にファクス送付された。そこには「どうしても期日指定を拒まれる場合は、6月19日(月)までに」書面を提出せよとある。
金曜16時56分のファクスに、もし同日、気付かないまま事務所を出ていたら、次に気付くのは月曜午前であろう。もし出張や終日公判などで気付かないまま推移した日には、気付いたときには期限を徒過している、ということにもなりかねない。

そもそも、期日指定(の強行予告)のような重要な文書は、余裕をもって受け渡すべきであろう。よりにもよって、金曜にファクスし、月曜を回答期限にする、と言う時点で、少々、異常である(相当の期間を定めた解除の催告を引き合いに出せば、まず期間不足で撥ねられること請け合いである)。
しかも、(これがなければ記事にはしなかったかもしれないが)16時56分のファクスである。まさか思いつきでこのような強行の予告をしたわけではないだろうから、熟慮して文書を作成し、わざわざ16時56分という、下手をすれば事務員の帰ってしまう(郵便を出すなどで少し早めに出てしまうことはある)時間帯を狙ってファクスしたのだろうと思うしか無い。なお、幸いにも事務所で仕事をしていたので、ものの5分でお返事を差し上げ、事なきを得たのではあるが。

こういう浅ましい遣り口は、裁判官としてどうとかいう以前に、人間として救いがたいとしか映らない。知恵は、どうやれば適正手続保障下に迅速な集中審理が遂げられるか、に向けられるべきだろう。浅ましい知恵を、あわよくば弁護人が気付かないうちに期限切れに追い込み、うまうまと期日指定を強行する方向にしか働かせられない裁判官。
勿論、腹立たしいが、それ以上に、少々、哀れである。

(弁護士 金岡)