毎年この時期に事件数を数えている。

刑事事件の件数は、ここ5年の数字を見ても大きな変動は無い。
但し、この半年を思い起こすと、半数を相当超える新件が、「弁護人に交代して貰いたい」という経緯でこちらに来ていることは、銘記されるべきかも知れない。今の弁護人では不満だという層が、弁えのある人に相談したり調べたりして、こちらに辿り着く。より難しい事件が多く、より負担感もある。件数が変わらないなら全体として負担は大きくなっている計算になるし、実際にそう感じる。過負担であると新件の受任は控えざるを得ず、事案の内容をある程度把握した上で適任者探しに奔走しなければならなくなることも増えた。

変わったところでは、この1年、大組織の刑事事件において、渦中の当事者個人の弁護を引き受けたことが複数回あった。比喩的に言えば、「病院の医療過誤における担当医の刑事弁護」のようなものである。大組織の「やらかし」に対しては被害者側に就きたいものであるが、それと、大組織が責任を渦中の個人に押しつける事態に対抗することとは並立する。「悪いのは組織の方だ」という主張を腹蔵なく提出する上で、組織本体の弁護人と渦中の個人の弁護人とは当然に分ける必要がある(そうしてもらえず組織のために心にもない自白を強いられた事件をみたことは何度もある)。企業の顧問弁護士には、そのような弁えを持って頂きたいものである。

行政事件は増えている。
もともと多く扱っていた在留関係事件も一定数はあるが、それよりも行政処分系の事件が増えている。
民事事件の傾向とも関連するが、一つの事件に対し、次から次へと法的措置が積み重なることが増えている印象である。これは十数年前とは明らかに異なる傾向だと思う。それだけ世の中が懲罰的に、ぎすぎすしているのだろうと思うが、一つの、私的な好ましくない行動が、民事上の請求、刑事告発、更に身分上の措置などにどんどん派生し、いつまで経っても紛争状態が終わらない(関係する弁護士の傾向性次第では寧ろ助長される)のを見ていると、社会の正義感情自体が悪い方向に変質しているのだろうと気付かされる。

民事家事は全体として、横ばいよりは、やや増えている感じがする。
現時点でこれといった傾向性が見えてくるわけでは無いが、一昔前であれば、弁護士会の会員控え室で駆け引き無しに紛争解決を図っただろう案件が、いきなり訴状送達から始まる・・そういう例が増えている感じはする。
口幅ったい言い方をすれば、うちでなくても構わないだろう事件は、できるだけ他所にお願いしたいところである(そうしないと「本業」に専念できなくなる)。しかし御指名で来られると、なかなかそうも言えないのが現実である。

2019 2020 2021 2022 2023
刑事事件
・捜査 6 4 10 8 7
・第1審 13 14 12 12 15
・控訴審 3 1 3 3 3
・上告審 4 3 1 0 2
(小計) 26 22 26 23 27
行政事件
・訴訟 6 13 16 9 11
・非訟 8 6 8 4 9
(小計) 14 19 24 13 20
民事事件
・訴訟 24 20 18 18 14
・訴訟外 33 29 21 19 21
(小計) 57 49 39 37 35
家事事件
・交渉 6 5 6 5 10
・調停等 4 3 4 7 7
・訴訟 4 4 5 5 5
(小計) 14 12 15 17 22
(総計) 111 102 104 90 104

(弁護士 金岡)