お馴染みの話題。
在宅被疑者の取調べに同行した件である(愛知県警管内)。
例のごとく弁護人の立会は拒否される。担当の警察官曰く、「取調べなので出来ない」というので「一律禁止か」というと「そうである」という。「国の見解と違うよね」と指摘すると「やったことがないので」と話が変わり、更に「一律ではなく今回は」と更に話が変わった。いつぞや(港警察署)と同じく、まともに検討していないことは丸分かりだ。役人の嘘つき体質には反吐が出る。
ここまでは普通の話だが、今回は更に続きがあり、「ちょっと話がある」と弁護人だけが別室に誘われ、要するに(同席させないなら必然の)黙秘方針に対する不服が述べ立てられた。
曰く、被害届が出た以上は話を聞かなければならない。
曰く、今は取調べで乱暴に迫るような時代ではない。
曰く、黙秘するなら否認事件として処理されることになる。
曰く、黙秘されると事件送致のしようがない。
曰く、黙秘するということは裁判でしゃべりたいということなのか。
曰く、真実が知りたいだけだ。
曰く、成人なんだから弁護人の立会は不要だろう。
十数年前の捜査弁護研修では、取調べにおける自白強要の手口を共有し、どのように助言するかが議論されたものだが、差し詰めその現代版というところであろうか。
こういう「黙秘権を放棄させようという説得」が行われ得ることを念頭に、事前に依頼者と打ち合わせをしておくと良いだろう。
我々弁護士からすれば、上記のような不服は実に低次元の話で取り合うまでもないし、「だからって同席を拒否する理由になるの?」と一笑に付す程度のことだが、あちらさんは真顔で言ってくるので、我々の意図するところ、不安に思う必要はないことを、依頼者にきちんと理解してもらっておく必要性がある。
今回はちょっと珍しい展開をたどったが、取調べ自体はものの12分(5分ごとに休憩と、+2分)くらいで終了した。依頼者によると、やはり供述するよう働きかけが続いたようだったので、「黙秘権放棄の説得はもうお断りする」と宣言して2分で終わった。
「準立会」というかどうかは別にして、同行して現地まで足を運ぶと、依頼者の目の前で取調官との遣り取りを見せることができる。それにより依頼者は、より、取調官の不当性を正しく認識し、地に足の着いた対応ができるようになる。電話による遠隔対応にはない利点であり、手間暇を惜しむべきではない。
(弁護士 金岡)