先日の本欄で、懲役5年の実刑判決に対する控訴保釈を(前任当時に一度、却下されているも)得た件を報告した。
懲役5年という壁をどう乗り越えるか、という点については、同程度の事案で数件、保釈案件(全て名古屋高裁、全て私が関係している事案なので疎明は楽だ)があることを例示して、「形式的な年数で決められる領域ではなく、前回保釈中の行状や生活実態を見るべきだ」と指摘した上で、それだけだと事情変更がないという躱された方が予想されたので、時々実践している監督体制の強化を提案して、無事、理解を得た。
本欄では、こちらを紹介しようと思う。
まずは原裁判所の意見である。
「(前回控訴保釈却下後の)本件保釈請求に際しては、被告人の母親及び弁護人の法律事務所の職員から、毎日、同事務所側が被告人の母親に連絡を行い、同人が、被告人の前日の外出及び帰宅の時間を報告する旨各誓約する陳述書等が提出されるなど監督方法が強化されたことからすれば・・もはや逃亡のおそれが高くはなくなり」
以上のように、「毎日、外出、帰宅を身元引受人に意識的に確認して貰い、それを更に弁護人側が確認して、全体として意識を高く持ち、裁判所に安心して貰う」方法である。
これを思いついたのは、かれこれ15年も前の、とある否認事件の勾留準抗告においてである。依頼者が、さしたる知己もなく、自宅を離れて車中泊を好む生活だったため、身元保証人もなければ住所不定ではないかも怪しい(厳密にはちゃんと自宅はあるのに、寝泊まりしたがらないだけであるが)事案だったが、勾留は回避できると判断し、これに代えて、毎日、弁護人が連絡を絶やさないという関わりを提案したのである(準抗告が認容され勾留却下に結実した)。
今で言えば、(ほぼ利用されていないのではないかという気がするが)保釈監督者制度の先取りみたいなところもある。
その後、裁判所が保釈に前向きながら逃亡だけはなんとか・・という事案で実戦投入し、現在に至る、というところである。
手間は手間であるが、逃亡を疑うべき相当の理由は、概して、痛くもない腹を探られるようなもので、この一手間で身の証を立てられる一助となるなら、良しとすべきである。
(弁護士 金岡)