本欄で好んで取り上げている、着席位置問題、いわゆるSBM問題であるが、本年1月の一審強刑事部会(第195回)で弁護士会から議題提出していたので、これを紹介しておく。
公開されている議事要旨(議論の部分)は次の如くである。
(引用)
裁判所
被告人の着席位置について、裁判所の中で協議しているかについて承知していない。また、他の事件への波及効まで考慮しているかについても承知していない。
弁護士会
個々の裁判所の訴訟指揮権、法廷警察権に関して、ベンチを置くか置かないかまでは個々の裁判官の判断というわけではないと考えるが、いかがか。
裁判所
最終的には裁判官の訴訟指揮権によることになると考える。
弁護士会
では、裁判官の個別の判断でベンチの撤去をすることもありうるのか。
裁判所
実際にそのような判断をしたことがあるかどうかについて承知していない。
弁護士会
高知地方裁判所においては、ベンチがなく、被告人は弁護人の隣に座っており、これは裁判所全体で協議して撤廃したものと考えている。名古屋においてもこのような協議の余地やその予定はあるのか。
裁判所
協議予定は現時点では無い。また、高知の取扱いについても承知していないため、この点についてこちらから申し上げる事項はない。
(引用おわり)
暖簾に腕押しとはこのことである。
まず1つめの裁判所発言「被告人の着席位置について、裁判所の中で協議しているかについて承知していない。」、これが凄い。
協議しているかどうかは裁判所の直接経験事実であり、「不知」の答弁はおかしいだろ、と思うが、平然と「不知」である。
で、高知のごとくベンチを撤去して、原則SBMにするのはどうなのか、という弁護士会からの質問に対しては「裁判官の訴訟指揮権」と躱す。訴訟指揮による問題なら、「公判前整理手続の効率的な進め方」とて、訴訟指揮の問題だから一審強になじまないことになろう。御都合主義とはこのことである。
また、議題は事前提出だから、高知から取材しておくことも出来たはずだが「高知の取扱いについても承知していない」。で、「高知の取扱いについても承知していない」以上は、それが見習うべきものかどうかの判断材料はないはずであるが、高知のようにしようよという「協議予定は現時点では無い。」と取り付く島もなし。
結局、やる気がない、の一言に尽きるだろう。庁を挙げての共同不法行為責任に問われるという自覚はないのだろうか。
せめて、「望ましい取り組みと考える裁判官もいるかもしれないので、一度、協議してみます」くらいのことはやれないものなのだろうか(全員が、ベンチの常設は不要と考えれば、そうすればいいだけのことではないのか・・置きたい人は自分で運び込ませれば良い)。
上から命令が降ってくるまでは何もしない、という姿勢で仕事をしていて恥ずかしくないのかと思う。
(弁護士 金岡)