弁護士会照会制度は、「弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」(弁護士法23条の2第2項)という制度であり、「依頼者→(委任契約)→弁護士→(申し出)→弁護士会→(審査→照会)→照会先である公私の団体等」という流れを経る。捜査機関に「捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」(刑訴法197条)権限があり、刑事事件裁判所に「検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」(刑訴法279条)権限があり、民事事件裁判所に「必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。」(民訴法186条)等の手段があるように、弁護士会にも公的な調査権限がある。

私は、割と弁護士会照会を多用している方である。統計をとっているわけではないが、平均を相当、上回る利用件数ではないかと思う。その立場からは、弁護士会照会がどんどんと使いづらくなっている、と感じる。使いづらいと言うのは、主として、照会先の対応の変化である。照会先が、照会を無視したり、不合理な理由で回答を拒否したりする、ということが増えてきていると感じるのだ。このような回答拒否に遭うと、極めて希に弁護士会が原告となって損害賠償請求訴訟を行うことが有り得るものの、それ以外の方法~とりわけ、照会を申し出た弁護士個人や、その依頼者が、法的手段に訴えて回答を実現させる方法は確立していないのが現状である。

確かに、照会先からすれば、

・ 何の利益にもならないのに回答に手間暇がかかる。場合により調査等に相当の負担を伴う。誤った回答をすれば責任を問われかねない危険がある。

・ 照会に応じ、正しく回答した場合であってすら、その事件で対立する側の当事者から攻撃される危険がある。

・ 要するに巻き込まれたくない。自衛の最たるは、回答しないことだ。

等と言った問題があるのは偽らざるところだろう。かてて加えて、個人情報保護法等により個人情報は原則秘すべきもの、という意識が無闇と蔓延し、保護義務違反に陥らないで済むよう過剰な回答拒否に走るという現象がこれに拍車をかけている。

しかし、である。弁護士制度は、この社会になくてはならないものであることは、異論を見ないと思う。そして、弁護士制度の中身を充実させ、つまり、よりよい弁護士活動を可能にするには、弁護士に、どうしても独自の調査能力がなければならない。弁護士会照会照会は、一種、弁護士制度の橋頭堡とも言うべき存在である。考えてみれば、回答に及び腰の照会先とて、顧問弁護士と契約していたり、そうでなくとも、いざとなれば弁護士に相談・依頼するのだろうから、都合の良いときだけ弁護士制度を頼りにし、平時は、弁護士制度にとって重要な弁護士会照会に協力姿勢を示さない、というのは御都合主義に過ぎるのではないか。

「その2」の投稿では、病理現象とも言いたくなるほどの回答拒否事例を幾つか紹介し、問いかけてみたいと思う。かねて本欄で、国家賠償請求訴訟に世直し的な側面があることを指摘したことがあるが、そろそろ回答拒否に対し敢然と法的措置に打って出る時期が来ている・・のかも、知れない。

「その2」に続く。

(弁護士 金岡)