近年、秋は整理手続研修をいくつか引き受けることが多かったが、今年は何の巡り合わせか、捜査弁護研修の依頼を複数、受けている。
捜査弁護研修は、記録によると2006年(弁護士登録4年弱)には既に引き受けていたようであり、かれこれ20年になろうとするが、都度都度、研修資料の改訂は欠かせないところである。
月並みであるが、敢えてということで挙げるなら、取調べ対策、身柄対策、デジタル証拠の保全については、どんどんと実務が変化し、内容の改廃も活発である。
今回は、特に取調べ対策について、思い切った改訂を施した。
従前の取調べ対策は、捜査側による被疑者の供述の証拠化にどのように対抗するかが問題意識であったが、近時は、「そもそも取調べに応じる必要があるのか」が鋭く問い直されている。実際、取調べに応じる必要性について脳内討論すると、「全くない」という結論以外が出てこなくなる。署名押印の一律拒否戦術を磨き上げていた時代からすれば隔世の感がある。
デジタル証拠の保全についても、誰もが膨大なデジタル記録と共に生活している御時世、消させず、捜査機関との取り合いを制することに問題意識が進んでいる。
ちょっと気をつけるだけで、客観事実を踏まえた捜査弁護が出来、いわば「攻め」の展開も想定できるようになる。
良く言うことだが、研修を引き受け、レジュメを練り直すことは、自身の実践を振り返る良い機会である。そこそこ改訂したレジュメを元に、現地の単位会参加者と議論するのが楽しみである。
(弁護士 金岡)