栗島渉弁護士より提供頂いた、名古屋地判2025年12月2日である。
名古屋拘置所の被収容者A(刑事控訴審の被告人で接見等禁止決定は付されていない)から弁護人宛の信書が、「通数制限」により一部墨塗にされたという、それだけ聞くと意味の分からない事案である。
名古屋拘置所では、弁護人等以外を名宛て人とする信書は原則1日2通に制限されていた。Aは、一般人XYに信書を発信した上で更に栗島弁護人宛に、一般人Zへの伝達事項、及び、Zから応答があった場合のZとの遣り取りについての細かな指示の記載された信書を発信しようとしたところ、名古屋拘置所は、栗島弁護人宛の信書のうちのZへの伝達事項に関する部分は「弁護人等以外への3通目」と判断して抹消処理を行った。結果、栗島弁護人宛に大半が墨塗された信書が届いたというものである。
国側の主張は、通数制限の潜脱を許すことは刑事施設の規律秩序侵害である等と言うものである。
裁判所は「(弁護人宛信書の一部に弁護人等以外への伝達内容が含まれているとしても)当該信書が弁護人等に対するものであるか否かの判断を、拘置所職員の主観的判断に委ねること」は相当ではない、刑訴法39条1項の趣旨に反する、とした上で、確定死刑囚の1通の手紙に弁護人宛便箋と弁護人等以外宛の便箋とが含まれていた2016年最判は、信書の発受が原則的に禁止されている確定死刑囚とそうではない未決拘禁者とは同列に論じられないことから、射程外であるとして、国側の主張を全面的に排斥した。
なお、10万円の請求に対し2万円が認容された。
外形的に弁護人宛の信書であることが明らかな文書について、刑事施設が内容に触れて良いのかすら議論がある。
これを強く否定した秋田地判2019年3月1日は、控訴審で破棄されているとは言え、未だに鮮烈な記憶を残している。(https://www.kanaoka-law.com/archives/671)
刑事施設は、性懲りもなく内容に干渉し、遂に手紙の一部分を第三者宛として抹消する暴挙に出ており、その付け上がりは止まるところを知らない。
10万円だろうと2万円だろうと、違法を見逃さず、(全く労力に見合わないのを百も承知で)敢然と国賠に打って出ることは、刑事弁護人の本懐であり、接見交通系国賠の歴史の良き継承者と言えるだろう。
(弁護士 金岡)

















