本記事は、本欄2024年2月6日「大阪府(大阪府警)を提訴」、その後の経過報告である同年10月18日「犯罪を奨励するが如き大阪府警」の流れで、国賠請求を認容した地裁判決(名古屋地裁2026年1月22日、作田寛之裁判長)を報告するものである。
未確定なので、評価は出来るだけ交えない。

各記事にも記載しているとおり、大阪府警の警察官(土橋勇介)が、協力を拒んでいる参考人(被疑者的要素はない)の居住するオートロックマンションのセキュリティを突破してマンション内に侵入したこと等が違法であるという国賠訴訟である。
侵入方法は、他の住民の出入りに乗じて入る「共連れ」や、相勤の警察官がいるので、侵入した一方が中から手引きして他方を侵入させるといった手口で行われた。某党のビラ配りなら大喜びで逮捕の口実にするだろう行為を、警察官がヌケヌケと行う、そこ自体に怖さを感じざるを得ない。

判決が認定した本件マンションのセキュリティは要旨、次の通りである。
本件マンションの出入口は、いずれにもオートロックシステムが備えられている。正面玄関には、インターフォン機能を備えたオー トロック操作盤が設置されている。外来者はインターフォン機能を通じて住人から入館許可を得る必要がある。正面玄関にはコンシェルジュスペースがあり業務時間中はコンシェルジュが待機している。
(補足すると、侵入した本件警察官ら~普通の背広姿である~が、コンシェルジュが待機している目の前を平然と通り過ぎることもあった。)

主要争点であるオートロック無断侵入の法益侵害性について、判決は次の通り説示した。
「本件マンションの出入りに関する管理体制に照らせば、正面玄関でインターフォン機能を通じて原告から入館許可を得ることなく上記行為に及ぶことは、原告の意思に反するものであり、また、原告に少なからず困惑ないし恐怖を与えるものであって、原告の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない 」

被告大阪府は、任意捜査の必要上、許容されると主張したが、これへの判示は次の通りである。
「捜査への協力を渋る関係者に対して粘り強く協力を求めることが必要かつ相当な捜査活動として許容される場合があり得ることを考慮しても、原告に対し本件・・事件について更なる事情聴取をするために本件立入り等に及んだことについては、原告に対して更に事情聴取をする高い必要性や緊急性があったとはいえない状況の下において、更なる協力に否定的な意向を示していた原告の協力を求めようとしたもので、その態様が上記のとおり原告の意思に反し、また、原告の私生活の平穏を侵害するものであったことからすれば、関係者に対する捜査活動として許容される限度を超えるものといわざるを得ず、警察官の職務執行として合理的理由を欠くことが明らかというべきである。」

被告大阪府はまた、原告が協力を渋り始めたことには加害者側の圧力が想定されるから安否確認(保護)の必要上も無断侵入が許容されると主張した(捜査対象事件は、いわゆる抗争事件であった)が、これへの判示は次の通りである。
「・・その他、原告に危険が差し迫っていたことを裏付ける事情はうかがわれない。原告の安否を確認する必要性があったとしても、一次的には正面玄関からインターフォン機能を通じて原告と会話するなどすれば足りるのであり、インターフォン機能を通じて原告から入館許可を得ずに本件立入り等に及ぶ必要性があったとはいえない。」
(補足すると、土橋警察官は、予め把握していた原告の子ども(小学生)に「共連れ」方式で侵入後、エレベーター内で声掛けをし(傍目には誘拐行為と見まがう・・原告が提訴を決意した背景には、このように子どもにまで恐怖心を与えたことが大きかった)、原告を呼び出すよう依頼して原告宅に入らせており、安否確認というならどうして子どもを家に帰したのだろうか?という疑問等があった)

以上の通り、名古屋地裁は、オートロックセキュリティにより守られていることによる私生活の平穏という保護法益論を受け止め、任意捜査によりオートロック無断侵入を行うには少なくとも高い必要性や緊急性が要求されること、安否確認という警察活動に関しても同様以上に差し迫った危険や必要性が要求されることを示した。

本訴遂行上、憲法学者の意見書もお願いし(後に公開される可能性は高い)、講学的な興味も尽きない事件である。

(弁護士 金岡)