既に報道されているが、名古屋地判2026年7月16日(剱持亮裁判長)は、公安調査官らが、団体規制法7条2項の立入検査を実施するためと称して、代理人弁護士を連絡窓口に指定し、立入検査先の施設の鍵も代理人弁護士に保管させていた組織構成員の自宅に、代理人弁護士を介することなく押し掛けて、オートロック設備を越えて立ち入り、公安調査官を名乗り、玄関を叩く等して呼び出そうとした行為について、国賠法上の違法があると判断して、国に損害賠償を命じた。
原告は、組織構成員(自宅住居の平穏侵害等)と我々代理人弁護士(代理権を無視された業務妨害)であったが、後者の請求は棄却されている。
未確定であるので、例の如く評価的なところは避けて、判決内容を紹介する。
判決はまず、私法上の委任契約は当事者ではない公安を拘束しないから、代理人弁護士を選任しているとしても直ちに直接接触が禁じられるわけではないとの前提に立ち(苟も公権力が弁護士制度を尊重しないことは公務員の法令遵守義務に反すると考えるが、今回は立ち入らない)、他方で、立入検査を実施するための事前接触が無制限に許されるものではないとし(団体規制法2条、3条の権力濫用禁止規定が引用されている)、本件の性質(代理人弁護士が早くから窓口を務めており、検査先施設の鍵の保管事実を告知し、円滑な立入検査のための協力を申し出ていたこと、濫りに公安関係者が自宅に押し掛けることで居住関係が危うくなる危険があったこと)を踏まえ、次のとおりの規範を示した。
「当該構成員に対して働き掛けをする具体的必要性があり、その目的を達成するために社会的に相当と認められる手段、方法により行われる場合に限って許されると解するのが相当であり、公安調査官が、これに反する態様で働き掛けを行った場合には、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたものとして、国賠法上違法となると解される。」(判決21頁)
その上で当て嵌めにおいては、前記したような代理人弁護士の事前の関与態様等を詳細に認定した上で、「公安調査庁の職員が、本件立入検査に際し、原告本人らの意向を確認し、本件建物の解錠を求めるために、敢えて原告弁護士らに連絡することなく、原告本人らの住居を直接訪問し、本件働き掛けを行う具体的必要性があったとは認め難い。」とした。
また、働き掛けの態様についても言及し、自宅に押し掛けた後、原告本人らからインターフォン越しに改めて、検査先の施設の鍵を代理人弁護士が保管していると告げられたにもかかわらず、代理人弁護士に連絡を取ろうとしなかったばかりか、オートロック設備内に立ち入り(その立ち入り態様も争点であったが今回は割愛する)、「極めて多数回(住居Aについて16回、住居Bについて100回以上)にわたってインターホンを鳴らし、多数回(住居Aについて15回、住居Bについて40回以上)にわたって玄関扉をノックしたほか、『公安調査庁です。』・・・などと、隣人等に原告本人らが公安調査庁の調査対象者であると認識されかねない態様によって声掛けをしている。」「かかる本件働き掛けの具体的態様は、まさに原告本人らが、原告弁護士らを通じて、各住居からの退去を強いられるおそれがあることを理由に、厳に控えるよう求めていたものであり、本件働き掛けの具体的態様からは、公安調査庁の職員らが、原告本人らが受ける不利益に配慮したような様子は全くうかがわれない。」とした。
ついでに、オートロック設備内の性質について言及し、(かの大阪府警のオートロック無断突破事件を思わせる判示であるが)「通常、居住者の許可がない限り、居住者以外の者が立ち入ることのできない場所であり、居住者の住居や生活の平穏が強く要請されるべきであることに照らすと、原告本人らが事前に直接の面談を拒絶する意向を明らかにしていたにもかかわらず、共用玄関扉を解錠して建物内に立ち入り、上記のような執拗な働き掛けに及んだことは、原告本人らの住居や生活の平穏を著しく害する行為であったといわざるを得ない。」とした。
判決の評価は後日のこととしたいが、判決文を拾うだけでも、近隣住民の目もお構いなしに、インターフォン100回に玄関40回・・往時のヤミ金も驚きの悪辣ぶりである。この種の仕事をしていると、警察や公安など、合法性の皮を被った「反社」程度にしか思えない局面がしばしばあるが、今回の場合、合法性の皮すら被り損なったわけであるから、文字通り、反社と言って差し支えなかろう。どちらがより取り締まられるべきなのかは、言うまでもない。
なお、住居Aへの押し掛け等を主導したのは野口裕久調査官(中部公安調査局)。
住居Bへの押し掛け等を主導したのは栁橋香織調査官(公安調査庁)である。
終わりに。
代理人弁護士は、私と古田宜行弁護士である。
上記判示中で指摘されている代理人弁護士の粘り強く適切な事前関与は、専ら古田弁護士の献身的努力によるものであり、敬意を表してここに記すこととする。
(弁護士 金岡)

















