先だっての一日二無罪については、田邊コートの合議事件は控訴され、奥山コートの単独事件は確定した(奥山裁判長には、名古屋におられる間に単独合議で計3件の無罪判決を受けたが、うち2件は控訴なく確定したことになる)。

それにしても、検察官控訴の制度は不合理である。
地裁が誤って無罪判決を下すことは、それはあるだろうが、控訴審裁判所が誤って無罪判決を破棄すると言うこともあるわけで、そして理屈の上では事実審はそこで終わる。かつて「“確かに”と“しかし”を入れ替えただけの逆転無罪判決」を得たことがあるが、不幸にして順序が入れ替わるだけで天国から地獄へ突き落とされることになりかねない。
再審開始決定を含めれば無罪判決を二度受けた名張再審、同様に三度の無罪判決を経てなお検察特別抗告中である大崎事件を引き合いに出すまでもなく、一度無罪になれば、もう十分、合理的疑いは投げかけられただろうに、と思う。また、「一審が名古屋高裁で、二審が地裁の誰々裁判長だったらよかったのに・・」という怨嗟が残るような制度は、やはり不合理だろう。

私人である被告人が、私人である弁護人を恃んで無罪判決に漕ぎ着けても、更なる抑圧を受け、なんとかひっくり返してやろうという危殆に晒される事態に遭遇する度、この思いを強くする。まして、検察官控訴となると臆面もなく手厚い事実審理を行い出す高裁が世に憚っている間は、繰り返し、無力感に苛まれるだろう。

(弁護士 金岡)