「証拠開示のデジタル化を実現する会」なるものが発足したと聞いた。
https://www.change-discovery.org/about/
共同代表には、我が国の巨頭ともいうべき刑事弁護士2名が名を連ねられている。

会の名のとおり、その活動の主眼は、「刑事事件の証拠開示運用を、デジタル的におこなうことを求める」ことに向けられているとのことである。

会の主張に曰く、私選事件では、紙媒体の謄写費用の負担が大きすぎる、という。全くその通りで、今日日、争点の有無程度に関わらず、いかなる事件も証拠開示の徹底が必要条件になるため、「着手金○○円と、あと実費として・・最低でも4~50万円」みたいな条件提示になる(3桁万円に至る事案もざらにあるし、複数弁護人分と依頼者分をまとめて数組発注することで更にひどいことになる)。それで依頼を諦める依頼者も出てくる。会の主張では、この負担を嫌い、証拠の全部謄写を躊躇う場合も挙げられている。
また、(先日、本欄でも物議を醸してしまったが)謄写体制が十分でなく、費用問題抜きに紙媒体では十分な謄写が困難な地域があること、いずれにせよ時間がかかりすぎることによる防御の立ち後れも指摘されている。

刑事裁判を受けさせられる側が、自身を攻撃する資料(勿論、中には自身を助けてくれる資料も含まれるだろうが、とにかくも国が裁判のために確保した資料)を手に入れるのに有償だという話自体が、根本的におかしいことを考えれば、このような問題は早急に解決されるべきだし、デジタル化は、作成してしまえば、謄写作業も謄写費用も極小以下なので、効果的であろう。

尤も、どうにもデジタル資料では記憶の定着が遅いこと(慣れの問題だろうか)や、読むだけなら紙媒体の方が圧倒的に速いために、紙媒体を無くしていこうという話であれば反対することになる。しかしこれは一長一短のことだから、一長一短のうちの長所だけを選べるようにして悪いはずはない。
即ち、どちらも選べるようにしてくれるなら、歓迎すべき活動と思う。

(弁護士 金岡)