【問題】

あなたから怪我をさせられたと主張し、そのことを警察・検察にも供述し終えた自称被害者が、あなたの知らないどこかの刑務所に服役しています。あなたは、その自称被害者のところへ行き、「怪我をさせられた」という主張を取り消させることが出来るでしょうか。

【裁判所の回答】

現実的な可能性があり、それも高度である。

【感想】

本欄「最高裁が相次いで釈放を」で紹介した最高裁判例は、勾留のための「罪証隠滅をすると疑うに足りる相当な理由」について、現実的な可能性の有無程度を問題とする姿勢を示した、と理解される。非現実的な想定で身体拘束することは身体拘束に「正当な理由」を要する憲法と相容れないので、至極当然の解釈である。

本年7月7日、堀田康介裁判官(名古屋地裁)は、某傷害事件の被疑者について勾留を却下したが、翌7月8日、同じ裁判所の別の合議体はこれを覆し、勾留を認めた。その際に問題となった一つが冒頭の「問題」である。働きかけて供述を変えさせる、ということは言うほど容易ではないと思うが、それはそれとして、居場所も知らない服役中の人物に働きかけを行うという想定が現実的なのか?という問について、常識的には、そんなの無理だろう、という答えを出すのではないか。しかし、この別の合議体は、高度の現実的な可能性を見出したようである(勾留を認めたどころか接見禁止まで付された)。因みに、この被疑者は前科前歴のない一般人である。

文字どおり言葉を失う(失った)。この合議体の裁判長は、過日、「接見禁止は厳しい人権制約だから慎重に判断している」と宣った御仁である。どの口でそれを言ったのだろう。最高裁判所が糺してくれることに望みを繋ぎたい。

(弁護士 金岡)