前編では、弁護人の同席を巡り検察官と弁護人とが押し問答になる間に、検察官が依頼者を逮捕し、即日起訴すると共に、勾留職権発動の促しまでしてきたこと、名古屋地裁の横井千穂裁判官がこれを認めてしまったことまで述べた。

7.当然ながら準抗告を申し立て、勾留翌日、無事に準抗告が認容され、依頼者は釈放された。
裁判所(丹羽敏彦裁判長、安福裁判官、森裁判官)の決定理由であるが、前回2月に勾留を認めなかった判断を指摘した上で、「事情に変化があったとは認められない」と明確に述べた。実質的な理由としては、同席権そのものについては言及しなかったが、同席問題について「被告人が公判期日に出頭する意思を明確にしていることなども考慮すると」「このような事情をもって、逃亡のおそれ、すなわち、被告人について召喚も勾引もできなくなるおそれが高まったと言うこともできない」とした(名古屋地決平成28年4月14日)。

8.当たり前のことを明確に述べた、素直な好判断である。個人的には「出頭する意思を明確にしていることなども考慮すると」ではなく「出頭しない可能性を窺わせる事情も無いことなどを考慮すると」としてほしいところであるが、実質、大差なかろう。
前編で述べたとおり、同席問題を公判出頭確保(=逃亡のおそれ)に結びつけて考えること自体が間違っている、ということである。勾留請求した検察官は勿論、依頼者に公判出頭意思を確認することも無く勾留した横井裁判官も、法律家としての見識を疑われても仕方ない。

9.同席問題で検察官と対立したからと言って、裁判所の呼び出しにも応じないなどという経験則は無い。そのことは容易に共有される認識である。故に、同席問題で「逃亡のおそれ」などとこじつけられる危険は極く低いことが確認されたとみて良さそうである。
平成20年の決定や今回の決定を背に、我々は、依頼者を守るため(取調室で孤立させるようなことがあってはならない)、依頼者とも十分に認識を共通にしつつ敢然と同席要求を行っていくべきである。身体拘束をちらつかせて恣に取り調べを実現しようとする圧力に対抗するには気力が必要だが、平成20年の決定や今回の決定は、格好の追い風となろう。

(弁護士 金岡)