前回のブログ「裁判官の自由~SM趣味は恥ずべき事か?」について、考えるに付け、問題だという感が、いや増す。

そこで高裁長官に抗議文を送付した。末尾に部分転載しておく。

さて、もう一度、議論を整理してみる。もし投稿画像が、草野球やゴルフであれば、私生活上の趣味を晒したからと言って問題にはならないだろう。

では上半身裸が良くなかったのか?子連れの海水浴場で海パン姿の写真を投稿しても問題はないだろうし、ボディビル自慢の裁判官が上半身のポージング写真を投稿しても、問題はないだろう。 やはり、性的な意味合いのある投稿画像が問題だったに相違ない。

では、性的嗜好を問わず、性的な意味合いのある投稿画像だったから問題にされたのだろうか。確かに日本社会では、性的な話題は公には慎むべしという風潮が強いだろうが、それは裁判官個人に強要するようなものではないだろうし、ツイッターは(公開設定にもよるが)私的な呟き空間であり、性的な話題を慎むべきという風潮自体、さほど確立していなかろうと思う。一般人が、ツイッターで、「昨日キャバクラをハシゴした」とか「どこそこのソープは最悪だった」と呟いても、非常識きわまりないと憤るほどのこともない。とすれば、裁判官がつぶやいても然りであろう(裁判官が、とりわけ高水準に品行方正な清廉君子であるべきなどとは思わないし、そのような教育、選抜もされていないだろう)。

かくして、今回の事件はやはり、特定の性的嗜好の、性的意味合いのある投稿画像であった点が問題にされたのだと結論する。平たくいえば「裁判官ともあろうものが、こともあろうにSM趣味を公言してプレイ画像を晒すなんて、とんでもない」というわけである。 これは、裁判官をお高くとまらせているのではなく、SM趣味を下に見ている、だから蔑視の問題だと言える。

少なくとも、戸倉三郎裁判官なる人は、御自身の裁判において、しばしば裁判当事者を「卑俗」「猥雑」などと見下し、心証形成や価値判断をされていたのかなぁと思うと、残念であるし、そうやって所属裁判官を統制するというのは、司法にとって不利益にしか働かないと思うのである。

 

【部分転載】

第1 抗議の趣旨

1.貴職が岡口基一裁判官に対し、本年6月21日に行った口頭による厳重注意処分は違法不当であり、抗議すると共に、即時撤回を求めます。

2.これに関連し、貴職が御庁事務局長である渡部勇次氏をして公表させた、岡口基一裁判官の問題とされた行動を「現職裁判官が裁判官の品位と裁判所に対する国民の信頼を傷つける行為をしたことは、誠に遺憾です」とするコメントも違法不当であり、抗議すると共に、即時撤回を求めます。

3.上記各違法不当な行為について、司法全体への信頼を失墜させるものとして、速やかに謝罪するよう求めます。

第2 抗議の理由

【中略】

4.裁判所が、社会通念上で許容される性的嗜好に関わる表現の形態において少数の立場に属する者からの信頼を勝ち得、公正な裁判を行うとの信頼を得るためには、速やかに前記処分及びコメントを撤回し、上記少数の立場に属する者らへの配慮を著しく欠いたことを謝罪すべきです。 前記処分やコメントが維持される限り、上記少数の立場に属する者らは、裁判所に対し、自身が蔑視されていると感じることになりますし、そのことは裁判所、ひいては司法全体への信頼を損ないます。 また、思考を統制された裁判官らが、上記少数の立場に属する者への蔑視を当然のものと考えるようになれば、そのような裁判官らによる裁判は、しばしば、蔑視の感情の下に偏った心証形成がされる危険があり、やはり、裁判所、ひいては司法全体への信頼を損ないます。 このことは、とりわけ、刑事事件の被疑者・被告人においては、望むと望まざるとに関わらず社会的に少数の立場に立たされるものが少なくないことを考えれば(僭越ながら、当職の依頼者層にも、反捕鯨活動家や風俗店従業員らが複数おります)明らかです。多数に与することを公言し、少数を蔑視する裁判所に、誰が信頼を寄せるでしょうか。

5.よって、第1記載の通り抗議し、速やかな撤回及び謝罪を求めます。 繰り返しになりますが、当職は岡口基一裁判官との関わりはなく、その人を直接擁護するものではありません。貴職の、上記少数の立場に属する者への蔑視が露骨に示されたことについて、それが裁判所、ひいては司法全体への信頼を損なうことを憂うものです。

【転載終わり】

(弁護士 金岡)