折に触れて書いている認識だが、逮捕勾留に土日はないから、裁判所は然るべき体制を構築して間断なく令状裁判を執り行う。
ということは、弁護人も又、巡り合わせ次第では時間外であっても裁判所と連絡を取り合い、正しい令状裁判を行って貰うよう(つまり誤って拘束してしまわないよう)弁護権を行使していく立場である。

ところが、現在の名古屋地裁では、弁護人から時間外に令状裁判を取り扱う部署へ電話連絡を入れる方法がない(ダイヤルインはあるが、誰かいるはずなのに出て貰えない)。時間外受付に電話を入れて取り次いで貰おうにも、時間外受付の電話は公表されておらず、ファクスで連絡するという不可解な取り決めになっている。
やっとのことで連絡を貰えて、そのときは着信に気づかず慌てて折り返しても後の祭り。もう一度、電話をもらえるまで、受話器を握りしめて待つしかないという不遇さである。

この5月の連休、そのために実に不便な思いをした。
裁判所には裁判所で事情はあろうと思うが(時間外受付に重要度の低い電話がじゃんじゃん架かってくると、それは面倒で、本業に差し支えるかも知れない)、なんとか工夫して貰いたいものだ。

(弁護士 金岡)

(参考 所長宛に改善を申し入れた内容の一部)

第1 改善を申し入れる事項
1.時間外でも、弁護人から令状部に確実に電話連絡できる方法を確保するよう、求めます。
第2 改善を申し入れる理由
2.本書面第1の1項について
(1)現在、御庁では時間外受付(夜間当直)の電話番号を公開しておらず、嘗ては同電話番号を知って直接架電した弁護士に対し、電話番号の入手方法を問責される出来事もあったと承知しております。現在の取り扱いは、弁護士会との協議の上、妥協案として、弁護士が時間外受付に連絡したい場合はファクス送付により連絡をつけることとされているとの認識です。
しかしながら、時間外に活動する弁護士が、必ずしもファクス送付が可能な場所にいるとは限りません。そして、携帯電話端末が全盛の現在は、ファクス送付が出来ない場所からでも携帯電話により御庁と連絡を取り合うことが可能であり、そのことが被疑者・被告人の防御上、望ましいことが屡々あります。
令状裁判という、強制処分の当否を判断する局面は、当然ながら、被疑者等の防御を務める弁護人の意見も十分に踏まえられる必要があり、そうであってはじめて適正な裁判が可能になります。弁護士が、外部から確実に、積極的に御庁に連絡を入れられる体制が望ましいことは言うまでもありません。
(2)当職の今回の経験では、5月4日、勾留却下を求める意見書及び疎明資料を裁判所に提出し、「担当裁判官との電話による面談も希望する。上記携帯電話番号まで御連絡頂きたい」旨、及び、釈放時の被疑者の迎え担当とは「当職経由で連絡することになるので、御高配願いたい」旨を、特に意見書冒頭に明記し、お伝えしました。
そして、時間外受付担当者にも、担当裁判官と確実に連絡を取り合える方法の確保を求めましたが、同担当者におかれては、「応じかねる」「ファクスで連絡して欲しい」という対応に終始されました。
しかし、このような状態では、当職は、いつ入るか分からない連絡に確実に応じるために、携帯電話端末を握りしめて待機することを強いられます。裁判所からの着信に出損ねた場合、裁判所からの架電は時間外は不通の代表番号で架かってくるため、当職からの折り返しは不可能です。
裁判官は、その執務状況に応じて都合の良い時を選んで架電してくるというのに、弁護人は、そのような自由が許されず、携帯電話端末を握りしめて待機することを強いられるというのは不合理です。
現に当職は、本件の場合、裁判所からの連絡がない間、当方からの連絡事項を伝達すべく何度も令状部の直通電話に架電しましたが、一切応答はなく、その後、ようやく裁判所から頂いた電話により、所要の説明をする等の職責を果たした次第です。
(3)裁判所も弁護人も、適正な令状裁判を心がけるという使命においては共通するはずであり、かつ、その立場は対等なはずです。そうであれば、裁判所が適正な令状裁判のために時間外に弁護人に連絡をつけたいと考えるのと同様、弁護人にも同様の需要があることは容易に御理解頂けるはずであり、そうであるのに、現状、弁護人は裁判所からの連絡を待つ他なく、一旦、電話に出損ねるや、折り返しの架電が不能なままであり、最悪、行き違いを繰り返すばかりで時間切れとなり、適正さを欠く裁判結果になることまで有り得る現状は、到底、正常とは言えません。
(4)そこで、速やかに、弁護人が時間外に確実に裁判所に連絡をつけることが可能な電話番号を公開されるよう、申し入れます。
繰り返しになりますが、現状は、弁護人を裁判所の下に置き、裁判所からは必要に応じて連絡するが、弁護人からの必要に応じた連絡は受け付けないと言わんばかりの対応であり、その姿勢も、また、結果的に適正な令状裁判に支障を来しかねないという点でも、改善を要するものです。