昨年12月、一審無罪・控訴審有罪の上告事件について、上告趣意書の提出後、僅か10日で上告を棄却される憂き目に遭った。敗軍の将が事件を語る趣味はないが、余りのことに言葉もなく、本欄で取り上げる。

逆転有罪の控訴審判決は以下で公開されている。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=87966
弁護人として言わせて貰えば、被告人が主張していないことを勝手に被告人の主張として取り上げ、それを不合理だと論難した上、「ヤクザ映画の見過ぎでは?」と思うしかない訳の分からない理屈を展開して有罪をこじつけたとしか言いようのないものである。
しかし、最高裁には通じず、三行半の棄却。御協力頂いた研究者に言わせると、「暴力団絡みという偏見による切り捨て」「高裁決定のような認定手法がまかり通ったらどうなるか、その恐ろしさが分からないのでしょうか。最高裁の役割放棄ですね。」ということである。

上告趣意書を提出して僅か10日で上告が棄却された時は唖然とした。上告趣意書と研究者の意見書を合わせると40頁、合議体の裁判官が全員、これを記録と照合させつつ熟読検討したとは思えない短さだったからだ。
当然、異議を申し立てたが、異議棄却決定までは20日を要した。年末年始を挟む関係で6日を控除しても14日。上告棄却は10日。異議棄却の形式的な処理に14日。余りに馬鹿にした対応ではなかろうか。「暴力団絡みという偏見による切り捨て」「役割放棄」という前記評価が正しいことを裏付けよう。
ごみ屑に等しい冤罪で何年も服役させられる依頼者の気持ちは想像もつかない。

(弁護士 金岡)