動いている事件の、正にそのことについて取り上げるのは好みではないが、これはもう書いておかざるを得ないと思うので、取り上げる。
 仙台高裁で破棄差し戻しになった交通事件のことである。
仙台高裁の判決は、本欄で取り上げた。
http://www.kanaoka-law.com/archives/598
また、判例秘書にも掲載されているようである。
【判例番号】 L07320579
 差し戻し審に要求されていることは、端的に言えば、正しい過失理解に基づく訴因変更と、現時点で有罪証拠がないので、変更後訴因について検察官が有罪立証できるかということになる。
 破棄差し戻し確定後、本年6月7日に打ち合わせ期日がもたれた。
その有様もまた、本欄で取り上げた。
http://www.kanaoka-law.com/archives/701
弁護人不在の打ち合わせで、検察官は、差し戻し審の審理のための鑑定に、あと一月必要だと申し出ていた。
 ところが・・待てど暮らせど鑑定が出てこない。
期限を数日、過ぎたところで、裁判所に「放置するな」と申し出るも黙殺。それから10日おきくらいで同旨の申出をするも黙殺。鑑定が出てこないなら結審すべきだと期日指定申立をするも黙殺。
たまりかねて、期限徒過から一月半、所長と検事正に抗議文を送付すると、検察官からは「いつになるか分かりません」という釈明になっていない釈明が。
かたや裁判所からは、「とりあえず公判を開きたい」、あと、刑訴規則所定の条文に基づき「証拠調その他の審理に要する見込みの時間等裁判所が開廷回数の見通しをたてるについて必要な事項を裁判所に申し出ること。」という連絡が。
上司に叱られたから動き始めたのだろう。 

「必要な事項を裁判所に申し出ろ」というが、検察官がどんな鑑定をやっているのかすら分からない弁護人に(検察官に対し鑑定事項や鑑定資料の開示を求めるも、ひたすら無視されており、裁判所に苦情を述べても黙殺されている)、なにを申し出ろというのだろう。定期的に抗議文ばかりが増え、とにかく、証拠開示の促進と、鑑定に期限を設けるよう訴訟指揮をしろといっても、ひたすら黙殺が続く実情である。

 

このような次第で、裁判所は、ひたすら、検察官の鑑定を待ち続けるようである。既に4か月を経過しているが、まだまだ待つのだろう。
見通しのある合理的期間が、時に数ヶ月に及ぶ場合があるのは分かる。(本件の場合は見積もり1か月だったのだから当てはまらないとしても)鑑定が数ヶ月を要すると言うことも有り得ないではなかろう。

 しかし今回の場合は、いつになるのか分からないものを待ち付けるというところに異常さがある。「いつになるか」「そもそも意味のある作業をやっているのか」の審理さえを拒まれている現状、裁判所は、いつになるのか分からない有罪証拠をひたすらに待ち続けている、というわけだ。弁護人が同じことをすればガミガミ急かされるだろうというのに、検察官の優遇ぶりたるや、すさまじい。

 

被告人から見れば「公正ってなに?」「裁判官の良心ってなに?」という状況であろう。

(弁護士 金岡)