富山地決2020年5月26日、同29日というものを小耳に挟んだ。
6夜にわたり、警察の手配するホテルに宿泊し、警察官同行で警察署と往復し、連日午前から夜中まで取り調べが続けられたという「任意」捜査を、実質逮捕と断じ、死体遺棄罪での勾留請求を却下し(但し勾留14日目)、それを受けた釈放と同時に殺人罪で逮捕された被疑者の、その後の勾留も、実質殺人罪の逮捕が先行していたと評価して却下した、というものである(他方、再逮捕と同時に起訴求令状された死体遺棄罪での勾留は認めた)。

判例集に載っているような前時代的な代物に思えるが、私の経験でも数年に一度くらいは経験している(判決で違法認定されたことはあるが、捜査段階での違法認定の経験は、残念ながら、まだない)ので、前時代的な近代の代物であるというのが正しい。
オチが残念ではあるが(違法でも何でも数日、稼いで無理矢理、起訴してしまえば、おとがめ無く起訴後勾留できることになれば、真の意味で将来の違法捜査を抑制することにはならないだろう)、現在の水準では立派なものだと思う(それにしても、どうせ20日勾留の延長を要求していたのだろう検察官が、その言説とは裏腹に勾留14日で死体遺棄罪を起訴できたのだから、裁判所もいい加減、注文どおりに延長することが「騙されているのだ」と、目を覚ますべきだろう)。

叩けよさらば開かれん、というほど楽観的では無いが、叩かなければ始まらない。捜査弁護はまだまだ未開拓の沃野であると言えよう。

・・と、良い話題を披露した後は、ダメな方も一つ。
名古屋高裁刑事第1部の最近の力作(控訴保釈却下に対する異議棄却決定、全文ママ)から。

「被告人は、前記事実により懲役A年B月の実刑判決を言い渡された。本件保釈請求はその後にされたものであり、身辺整理の必要性や出頭確保のための身元保証環境の構築など所論指摘の事情を考慮しても、裁量保釈を認めなかった原決定に裁量逸脱の誤りはない。」

かの有名なネットスラングで表現するなら、「節子、それ判断理由やない、結論だけや」とでも言うところだろうか。

(弁護士 金岡)