懲役5年6月の実刑判決に対する控訴審裁判体(A)による控訴保釈却下。
異議を申し立てるも高裁裁判体(B)により棄却。
その理由は「その逃亡のおそれが比較的高額の保釈保証金をもつてしても担保することができない程度に高度なものであるとして、上記罪証隠滅の程度なども併せ考慮した上で保釈が適当でないと判断したと解される原決定が、その裁量を逸脱し違法なものとまでいうことはできない」というものであった。なお、保釈保証金としては、原審×1.2倍を提案していたが、上記のように「幾ら積んでもダメなものはダメ」とされたのである。

その後、2か月余を経て控訴棄却。
粘り強く上告保釈を申し立てたところ、僥倖と言うべきか、本来配点されるはずの控訴審裁判体(A)が差し支えとやらで、高裁裁判体(B)の判断となり、原審×1.4倍の保釈保証金で保釈が許可された。
奇しくも、B裁判体の3名の顔ぶれは全く同じである。

2か月ちょっと前に、「違法なものとまでいうことはできない」という、事後審の限界をにじませて保釈を不許としたB裁判体が、ちょっとした保釈金の積み増しで当初保釈申立を認めたわけである。
もし2か月ちょっと前に当初保釈申立をB裁判体が判断していたらどうなっただろうか、と思わずにはいられない(もし×1.4倍で許可されていれば、いかなA裁判体でも原裁判の裁量を尊重せざるを得なかったのではなかろうか)。

地裁と高裁が逆だったらなぁと思ったことは、実務家たるもの、一度や二度はあるだろう。今回もまた、その妙に振り回された。数ヶ月、無為に拘束されていた依頼者のことを思うと、釈然としない。せめて異議審で×1.4倍を提案してくれても良かったのではなかろうか。

(弁護士 金岡)